教授コラム

研修にちょうどよい環境とは

研修先を選ぶとき、病院の規模、症例数、指導医の数、そして研修する人の数が大切だとよく聞きます。

確かに、どれも大切です。症例数も多いに越したことはありません。

ただ、「症例数の多い病院を選んだのに、入ってみると研修医も多く、思ったほど症例に当たらなかった」という話を聞くことがあります。

考えてみれば、大切なのは病院全体の症例数ではなく、自分が実際にどれだけ経験できるかです。

最近、初期研修について相談を受けたときには、病院の名前や規模だけでなく、症例数、指導医数、研修医数のバランスも考えて、研修先を紹介するようにしています。

一方、麻酔科の専攻医研修については、滋賀医大を中心に研修環境を整えています。大学で研修を完結する先生もいれば、それぞれに特徴のある関連病院を組み合わせて経験を積む先生もいます。その人に必要な症例と経験を考えながら研修できるようにしています。

しかし、ここにも難しさがあります。

症例をたくさん経験させれば、それでよい研修になるわけではありません。次から次へと症例を割り当てれば、指導する側は「経験させている」つもりでも、本人には「やらされている」と感じられることがあります。

一方で、本人の意欲だけに任せて、際限なく症例を経験すればよいというものでもありません。

必要なのは、適切な症例数と適切な指導、そして一つひとつの経験から何かを学べる余裕だと思います。

もちろん、すべてを希望どおりにすることもできません。時には希望とは違う症例や仕事もありますし、少しくらいの我慢は必要です。

環境は大切です。私たちもできるだけよい環境を整えたいと思っています。しかし、環境を整えるだけでよい研修になるわけでもありません。

多すぎず、少なすぎず、少し背伸びをしながら経験を積んでいく。

その積み重ねの中で、麻酔が少しずつ面白くなっていく。

一人ひとりにとっての「ちょうどよい」を考え続けることも、私たち指導する側の大切な仕事なのだと思います。