当講座では、麻酔薬の作用や心筋保護、疼痛、免疫など、周術期医療に関わる幅広いテーマを基礎・臨床の両面から研究しています。研究成果をより安全で質の高い診療へ還元することを目指し、各研究者が取り組んでいる研究をご紹介します。

北川 裕利

基礎研究

麻酔薬・麻薬・低体温の心臓自律神経終末機能に及ぼす影響

心臓交感神経は心臓に分布し、その神経終末よりノルエピネフリン放出と再取り込みにより心機能が調節されている。我々はこの神経終末機能が麻酔薬や麻薬、低体温によりどのように影響を受けるのかについて調べている。

基礎研究

麻酔薬の心筋虚血再灌流傷害保護効果とそのメカニズムの解明

吸入麻酔薬が心筋保護効果を有することが1997年に発見されて以来、麻酔薬の臓器保護効果について盛んに研究が行われてきた。私達は単離心筋細胞を用いた細胞レベルの保護効果、心拍動下ラット心筋による保護効果について調べ、最終的に臨床に応用できる麻酔法を開発したいと考えている。

臨床研究

新しい挿管デバイスを用いた気道管理の取り組み

挿管困難症は古くからある問題で、いまだ解決されていない麻酔関連合併症である。我々は最近発売されたビデオ喉頭鏡がその合併症を減らす有力な武器と考え、実使用法に関する情報を多岐にわたって収集している。最終的には本デバイスを日常的に使用して挿管困難症例に遭遇しなくなることを目標としている。

中西 美保

基礎研究

慢性疼痛の脳内メカニズム(ペインイメージング)

大阪大学との共同研究で小動物用超高磁場11.7T磁気共鳴画像(MRI)装置を用いて、磁性酸化鉄ナノ粒子に標識された慢性疼痛モデルマウスの単球・マクロファージの分布を評価しています。

proton MR Spectroscopyを用いて、慢性疼痛モデルマウスの局所脳神経機能を分析し、慢性疼痛のメカニズムや漢方薬の薬効機序を評価しています。

臨床研究

慢性痛患者における病態評価と治療効果

疼痛生活障害評価尺度(PDAS)、不安抑うつ測定尺度(HADS)、破局的思考尺度(PCS)、自己効力感尺度(PSEQ)、QOL(EQ-5D)などの痛みに関連する尺度の質問紙を用いて、慢性疼痛の病態と治療効果を評価しています。

小嶋亜希子

基礎研究

麻酔薬による心筋イオンチャネルの修飾作用について

  1. Ca2+制御タンパク質に着目した、吸入麻酔薬の心筋保護作用の分子基盤
  2. 麻酔薬による心拍数制御メカニズム
  3. 麻酔薬とチャネルタンパク質との相互作用
  4. 心臓チャネル病に対する麻酔薬の機能的影響

マウスやモルモット単離心筋細胞および遺伝子導入した培養細胞に対する電気生理学的実験や、摘出心臓、個体に対する心電図記録、ランゲンドルフ灌流下での摘出心臓における左室内圧測定、コンピューターシミュレーション法などを用いて、これらの研究を行っています。

特に近年は、心臓イオンチャネルに変異や多型がある場合、麻酔薬による心臓作用(心電図上のQT延長作用や催不整脈性など)が変化する可能性について検討を行っています。

臨床研究

麻酔中のQT間隔の変動に関わる因子の解明

臨床麻酔中のデータの解析を行い、麻酔中に発生しうるQT延長・不整脈に関わる因子について検討を行っています。この臨床データと基礎研究の成果を併せ、患者さんの心臓イオンチャネルの遺伝的差異・多様性に応じた麻酔管理を行い、より安全な周術期管理が可能となることを目指しています。

平岡進

研究内容

麻酔薬による免疫機構への影響の解明

周術期は免疫が抑制されると一般的には言われておりますが、麻酔薬単独での免疫への影響については解明されていない部分が多々あります。大学院生の頃に生命科学講座生物学教室にお世話になり、そこでマウスを用いて静脈麻酔薬の獲得免疫への影響についての研究を行っていました。その後は他の麻酔薬についても研究を行っています。

麻酔薬ごとに免疫への影響には差異があり、個々の状態に応じた麻酔薬の選択の一助になればと考えております。

澤崎史弥

基礎研究

心筋梗塞に対するジペプチジルペプチダーゼ3の心保護作用

ジペプチジルペプチダーゼ3は、過去の研究で高血圧や糖尿病など様々な疾患に起因する心筋傷害を抑制することが明らかになっています。現在はそのジペプチジルペプチダーゼ3をノックアウトしたマウスを用いて心筋梗塞モデルを作製し、心筋梗塞に対する心保護作用を評価することで虚血性心疾患のメカニズムを研究しています。