初代教授 天方義邦先生の時代

滋賀医科大学麻酔学講座は、滋賀医科大学の開学から間もない1977年4月1日に開講され、翌1978年の附属病院開院とともに麻酔診療を開始しました。開講当時は、初代教授の天方義邦先生、奥村福一郎助教授、澄川耕二講師を中心とする体制で、10室の手術部業務を担いました。

創設期の教室は決して大きな所帯ではありませんでしたが、後に全国の大学・医療機関で指導的立場を担う人材を含む、非常に充実した陣容で出発しました。初代の天方義邦教授は、そのような優れたスタッフとともに、開講間もない大学病院において麻酔診療の基盤を築かれました。安全な麻酔管理を最も重要な柱とし、手術医療を支える麻酔科の役割を確立するとともに、診療・教育・研究の土台を一つひとつ整備されました。滋賀県において麻酔科学を専門領域として根づかせ、大学病院麻酔科としての精神的基盤を形づくられた時代であったといえます。

第2代教授 野坂修一先生の時代

1995年には、天方教授の退官に伴い、第2代教授として野坂修一先生が就任されました。野坂教授の時代には、手術件数の増加、医療の高度化、2004年からの医師臨床研修制度の開始、さらに2009年の附属病院再開発による手術室の拡充など、麻酔科を取り巻く環境が大きく変化しました。そのような時代のなかで、人材確保に尽力しながら、安全で質の高い麻酔診療を継続し、教室の診療体制を大きく発展させました。

野坂教授は、臨床麻酔を中心に据えながら、慢性疼痛、麻酔のメカニズム、麻酔医事法制など、麻酔科医が関わる領域を広く捉えられた先生でした。特に、麻酔に関わる説明義務や医事紛争など、医療安全と法的責任に関する研究にも取り組まれ、麻酔科診療を社会的・制度的な視点から考える姿勢を教室に根づかせました。臨床、教育、研究のいずれにおいても教室の幅を広げ、多くの麻酔科医を育成された時代でした。

現体制への継承と発展

2014年4月には、第3代教授として北川裕利が就任し、現在に至っています。現体制では、天方教授が築かれた創設の精神、野坂教授が発展させられた診療・教育体制を受け継ぎながら、手術室における麻酔管理を中心に、集中治療、ペインクリニック、術前・術後管理を含めた周術期医療の充実に取り組んでいます。また、大学病院として高度で安全な医療を担うとともに、滋賀県内の関連病院と連携し、地域の手術医療を支える麻酔科医の育成にも力を注いでいます。

近年、麻酔科医に求められる役割は、手術中の麻酔管理にとどまらず、術前評価、術後管理、集中治療、疼痛管理、多職種連携、地域医療支援へと広がっています。当講座でも、こうした時代の変化に対応し、周術期医療を担う診療科としての機能をさらに高めるとともに、看護師特定行為研修や多職種協働など、新しい医療体制の構築にも取り組んでいます。

現在と今後

現在、滋賀医科大学麻酔学講座は、大学病院ならではの重症症例・希少症例に対応しながら、地域医療を支える実践的な麻酔診療にも取り組み、滋賀県の周術期医療の中核としての役割を果たしています。

開講以来、当講座は、創設期の優れた人材によって築かれた高い志を原点とし、時代の要請に応じてその役割を広げてきました。今後も、先人たちが築いてこられた歴史と伝統を大切にし、診療・教育・研究を通じて、患者さんに信頼され、若い医師が誇りを持って学び成長できる教室であり続けることを目指してまいります。