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麻酔科教授ブログ

平成29年度を迎えて(大学の役割を再考する)

 今年度も新しい専攻医2名を迎えることができました。これもひとえに滋賀医大を支えていただいている皆様のご尽力の賜物と大変感謝しています。
 新しく仲間としてお迎えした先生方、滋賀医科大学にようこそ。専門医を取るまでプログラムに入らないといけないからということで大学に来られた方もあるでしょう。また、一般病院にない手術麻酔を行うことができるということもあるでしょう。研究ができる環境を求めて来られた方もいると思います。個人が目標をもち、それぞれが努力することに私自身は最大限エールを送りたいと思います。
 皆さんが研修された初期研修制度は「医師が将来専門とする分野にかかわらず、基本的な診療能力を身につけることができる」ことを目標として平成16年度に臨床研修が必修化されました。しかし、この目標を達成できるのは、本当にごく一部の若者だけではないでしょうか。なぜなら、この初期研修医制度が診療能力を中心とした技能教育に終始して、医師としての基本姿勢を学ぶ機会が得にくいという致命的な欠陥があると思います。麻酔科で言えば患者一例毎に丁寧な麻酔を指導医とともに行うことを初期研修医に要求していますが、本制度が始まる前はこうした指導に加えて過去から現在の論文を一緒に読み、症例経験などを通して臨床研究や基礎研究を行い、生体の未解決問題に迫ろうとする考え方を身に着けるよう指導することにしていました。良質の麻酔科医として成長するには、初めの2年間に基礎学力(体力)をつけなければ、その後の長い教育期間を耐えるだけの気力や根気を醸成できません。初学者には読み書きそろばんを学ぶ環境が大切ですが、医師3年目から開始するのではハードルが高くなりすぎて上手くいかない事例も多く見かけます。日々の麻酔技術の修得だけではなく、麻酔症例を通して様々な現象の原理を探り、論理的思考を行い、サイエンスとしての医療が行えるよう努力することが、良質の麻酔科医になるためには不可欠であると思います。
 今大学で専攻医として研鑽を積まれている先生方にはなかなか自分のやりたいことができないと感じることや、毎日溢れんばかりの業務に埋もれてしまうこと、理不尽な扱いを受けること、他科との垣根が高くて息苦しいと感じることなど多くの不満が募るだろうと容易に想像できます。しかし、上記理由から大学研修が果たす役割は大きく、できるだけ早い時期に大学を経験することが最も大切であると思います。初めは苦しいと思うかもしれませんが、多くの仲間と励ましあいながらであれば、比較的楽に乗り越えられます。振り返ってみれば、必ずや自身のために役立ったと思えるようになるでしょう。私もスタッフも一緒になって取り組みたいと思っています。これからどうぞよろしくお願いします。

2017年4月19日