心臓交感神経は心臓に分布し、その神経終末よりノルエピネフリン放出と再取り込みにより心機能が調節されている。我々はこの神経終末機能が麻酔薬や麻薬、低体温によりどのように影響を受けるのかについて調べている。
吸入麻酔薬が心筋保護効果を有することが1997年に発見されて以来、麻酔薬の臓器保護効果について盛んに研究が行われてきた。私達は単離心筋細胞を用いた細胞レベルの保護効果、心拍動下ラット心筋による保護効果について調べ、最終的に臨床に応用できる麻酔法を開発したいと考えている。
挿管困難症は古くからある問題で、いまだ解決されていない麻酔関連合併症である。我々は最近発売されたビデオ喉頭鏡がその合併症を減らす有力な武器と考え、実使用法に関する情報を多岐にわたって収集している。最終的には本デバイスを日常的に使用して挿管困難症例に遭遇しなくなることを目標としている。
慢性疼痛患者におけるproton MR Spectroscopyを用いて視床、前帯状回、前頭前野の局所脳神経機能の分析することにより、痛みの評価することを研究しています。局所脳神経機能の診断法として高度先進医療の申請についても考慮しています。
椎間板性腰痛に対するIDET(Intradiscal Electrothermal Theapy:椎間板内高周波熱凝固法)の効果をVAS、ローランド障害スコア、SF-36などで調べています。同時にDiscogenic Painについて、IDET施行時の再現痛の部位を調べることによって、椎間板性腰痛の放散痛の部位について調べています。
また椎間板ヘルニアに対するNucleoplasty(椎間板高周波減圧術)の効果もVAS、ローランド障害スコアなどで調べており、IDET、Nucleoplastyは高度先進医療に申請する予定です。神経根、末梢神経のPulsed-Radiofrequency(パルス高周波法)の効果を調べています。
麻酔薬とその作用部位の分子間相互作用の解明から麻酔メカニズムを研究しています。
最近の研究対象は、主に構造がわかっているイオンチャンネルをモデルに用い、計算機シミュレーション(ドッキングシミュレーション)を用いて、麻酔楽の結合部位や麻酔薬とタンパク質の分子間相互作用をみています。さらに、電気生理学を用いて、単チャンネル解析との関連から、麻酔薬の結合とチャンネル機能修飾の関連を明らかにしようとしています。
吸入麻酔薬は心室筋細胞のイオンチャネル、特にCa2+輸送タンパク質に作用して、心臓を傷害から保護することを明らかにしました。また、洞房結節細胞のイオンチャネルに対する麻酔薬の作用を詳細に調べ、麻酔薬の変時作用についても検討を行っています。これらの成果を論文・学会で発表した結果、2013年度の日本麻酔科学会で学会賞を受賞することができました。