教授挨拶
1846年にモートンがマサチューセッツ総合病院でエーテルによる麻酔を成功させて以来、手術と麻酔は表裏一体の関係になりました。当時の手術に関する記述を読むと、 Morbidityと Mortalityの 2大原因は術中術後の感染症とOccasional Anesthesia(麻酔をかける専門科がいないこと)であり、麻酔で死亡することが大問題であったようです。そのため外科医により麻酔を専従する医師を養成し、麻酔死亡率を低減する努力を懸命に続けてきました。その結果、麻酔科学が自立し、急速な発展により得られた急性期管理術は患者の手術医療に大きく貢献し、手術医療の発達にも大きく影響したことは言うまでもありません。現在では麻酔科学が扱う分野は手術中の麻酔はもちろん、術後を含めた周術期医療全般に至り、呼吸・循環管理や内分泌・代謝・栄養管理、疼痛管理を対象とした集中治療、救急医療、ペインクリニック、無痛分娩、緩和医療などに活躍の場は広がっています。
我々は、いまの麻酔科学を、次の世代に伝え、さらに発展させなければなりません。そのためには最新麻酔科学を実践できる良質なプロフェッショナル集団を育てることが必要です。その能力を体現することで地域に還元し、さらに世界に発信することで社会に貢献できればと思っています。前述のような麻酔創世期とは時代が変わって研究対象は異なっていますが、麻酔科学を発展させる原動力は当時も今もリサーチマインドを持って疑問を解決する姿勢が必要です。われわれはその理念のもと、国内外の施設と協力しながら環境を整備して、個々人の「教育・臨床・研究」を無理なく醸成できるような講座運営を理想としています。
滋賀医科大学麻酔学講座は、都会の喧騒から少し離れた澄んだ空気と水に溢れた大津の地にあり、病院の窓からは壮大な琵琶湖と比良の山並みが一望できます。大津市は京都市と都道府県庁所在地同士の距離が全国一短いことでも有名で、両市の中心部からの距離が約10kmしか離れていません。そのためJRで大津駅から京都駅まで10分、大阪駅まで40分で到着する場所に位置し、関西広域からの通勤等に至便でありながら他の地域に少ない山や湖など自然が沢山あることが最大の魅力です。そして何より大津は人口増加都市として、将来に渡り社会福祉を安定して維持できることから活力のある医療政策を積極的に進めることのできる数少ない医療圏に位置しています。
滋賀医科大学麻酔学講座は麻酔科学を一緒に学ぶ仲間を求めています。麻酔科学を志す若い方はもちろんのこと、大学病院を一度も経験されておられない方、他科からの転科を希望される方で新たに麻酔学を学びたいと思っている方、諸事情で勤務制限のある働き方しかできない麻酔科医の先生方にも広く門戸を開放しています。このホームページを読んで興味を持たれましたら、是非当方までご連絡ください。滋賀で一緒に麻酔科学に邁進してみませんか。